遺品整理業者に遺品整理を依頼する場合、まず業者に遺品整理の場所を訪問してもらい、遺品の処分量や清掃場所などを把握した上で見積り書を作成してもらいます。依頼者が見積り内容に納得したら、契約書にサインをします。契約書には見積り書の内容に加えて免責事項や個人情報の取り扱いなど重要な内容が記載されているため、内容に問題がないか確認することが大事です。
当記事では、遺品整理の契約書の確認ポイントを6つ、また遺品整理業者の選び方も解説します。遺品整理業者に遺品整理を依頼したい方は、ぜひ参考にしてください。
1. 遺品整理の契約書とは?
遺品整理の契約書は、遺品整理を円滑かつ安全に進める上で重要な書類です。契約書は遺品整理業者が用意し、内容を確認した上で依頼者がサインをします。
遺品整理を行う際に契約書を作成する目的は、契約内容の解釈の違いを防ぐためです。契約書を作成して業者と依頼者の認識をすり合わせることで、遺品整理を行う際の内容を双方が理解できます。
遺品整理の契約書にサインをすると、内容に誤りがあると気がついたとしても解除することが難しくなります。トラブルを避けるため、契約書にサインをする前に内容をしっかり確認しましょう。
2. 遺品整理に関する契約トラブルの実態
遺品整理に関する契約トラブル発生件数は、年間90~110件程度で推移しています。
出典:独立行政法人 国民生活センター「こんなはずじゃなかった!遺品整理サービスでの契約トラブル‐料金や作業内容に関するトラブルが発生しています‐」
総務省が行った「遺品整理サービスの実態調査結果」によると、遺品整理に関するトラブルの3割が業者の契約書未作成であることが分かっています。
出典:総務省行政評価局「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」
遺品整理に関する主なトラブル事例は、下記の通りです。
- 処分しない予定の遺品を処分された
- 作業後に高額な料金を請求された
- 契約したのに作業が始まらない
- 高額なキャンセル料や違約金が発生した
- 遺品の搬出時に床に傷がついた
遺品整理に関するトラブルの多くは、契約時に細かい取り決めを行っていないことが原因です。遺品整理サービスには業法がなく、不適切なサービスを行う業者を規制できません。そのため、依頼者が望む形で遺品整理を完了させるには、まず信頼できる遺品整理業者に依頼することが大切です。
3. 遺品整理の契約書で注意すべきポイント
遺品整理業者に依頼をすると、まず遺品整理の見積り書が提示されます。遺品整理における見積り書・契約書・同意書の違いは下記の通りです。
- 見積り書…作業内容や費用の確認する書類
- 契約書…契約内容を証明し、依頼者が対価を支払う義務が発生する書類
- 同意書…業者と依頼者の同意を証明する書類
見積り書は「確認」の意味合いがあるのに対して、契約書や同意書は「合意」の意味を持ちます。見積り書を受け取っただけであれば、あくまで遺品整理をするか検討している段階です。契約書にサインをすると、見積り書の内容に沿って遺品整理を行うことが確定します。
ここでは、遺品整理の契約書で注意すべきポイントを6つ解説します。
3-1. 遺品整理業者が負う責任の範囲が確認できる
契約書を交わす場合は、免責事項の内容を確認することが重要です。免責事項とは、遺品整理業者が負う責任の範囲を意味します。
免責事項の例は、下記の通りです。
- 作業中に生じた損害のうち、当社の不注意によるもの以外は保証しません
- 当社の過失による損害は、契約保険にて補償します
- 要望がない場合、遺品処分方法は当社に一任することとする
免責事項を読むと遺品整理の作業中にトラブルが起こった場合に、遺品整理業者が責任を負ってくれるのかが分かります。トラブル発生時に不利になることを防ぐために、業者側の対応を確認しましょう。
3-2. 具体的な料金・サービス内容・作業日程の記載がある
遺品整理業者と依頼者の間で不当な追加請求や認識のずれが起こらないように、料金・サービス内容・作業日程が具体的に記載されているか目を通すこともポイントです。
契約書の確認では、下記の項目について詳しく記載されているかチェックしましょう。
- 場所または物ごとの料金
- 作業スタッフの人数
- 作業日程と時間
- 部屋の広さ
- トラックの台数
- 清掃や消臭などオプションサービスの内容
サービスの内容や料金は見積り書の内容と同じものであるか、契約書と照らし合わせて確認します。料金が「一式○円」と記載されていたり作業内容が曖昧だったり、内容が明確に記載されていない業者には注意が必要です。遺品整理の料金や金額に疑問や不安な部分がある場合は、契約前に遺品整理業者に説明を求めましょう。
3-3. 依頼者にとって不公平な内容がない
契約書の内容が、依頼者にとって不公平な内容になっていないことも重要なポイントです。
たとえば、「甲(業者側)が判断した場合」という記載は業者側の判断で契約解除や料金の追加を求められ、依頼者にとって不利になる可能性が高いです。依頼者にとって不利になる内容が記載されている場合は、業者と話し合うか専門家に相談しましょう。
3-4. 分かりづらい内容がない
契約書は、「契約を結ぶ相手は誰か」「契約により業者と依頼者にどのような権利と義務が発生するのか」などが明確である必要があります。甲・乙といった硬い文章で書かれた読みづらい契約書であっても、自分が不利にならないように内容にしっかり目を通すことが大切です。
トラブル発生時に「知らなかった」「理解できていなかった」と主張しても、取り決めが書かれた契約書にサインをしていれば、合意したとみなされます。専門用語や硬い表現が使われていて内容が分かりづらい場合は、必ず業者側に質問して契約書内容の理解を深めましょう。
3-5. 個人情報の保護についての記載がある
個人情報の取り扱いは、安心して遺品整理のサービスを利用するために確認すべき重要な部分です。個人情報の保護を徹底していない業者に依頼すると、下記のようなトラブルが起こる可能性があります。
- データが残ったままのパソコンを不法投棄される
- クレジットカードを悪用される
- スマホやパソコンから個人情報が流出する
個人情報の流出といった被害に遭わないために、契約書に個人情報の保護や廃棄物処理について記載されているか確認しましょう。
3-6. 見積り書と契約書の内容が同じか
契約前に依頼者から変更がない限り、多くの場合は見積り書の内容で契約書が作成されます。契約書にサインをする前に、「見積り書の内容が記載されているか」「変更内容が契約書に反映されているか」を必ず確認しましょう。
契約書では「追加請求」の項目に特に注目します。追加請求は、一定条件を満たすと作業料金が加算される仕組みです。見積り書にはなかった追加請求の文言が契約書に記載されることもあるため、十分注意しましょう。
4. 遺品整理業者の選び方
遺品整理への需要が高まる中、サービスを展開する業者数も増加傾向にあります。数多くある業者から信頼できる業者を選ぶには、いくつかポイントがあります。
安心して依頼できる遺品整理業者を選ぶポイントは、以下の通りです。
- 遺品整理士が在籍している
遺品整理士は、遺品整理士認定協会が認定する民間資格です。遺品整理士の在籍の有無は、業者のホームページから確認できます。遺品整理に必要な知識を持つスタッフが在籍している業者であれば、安心して作業を任せられます。
- 訪問見積りをしている
遺品整理業者の見積り方法は、電話・メール・訪問などで行われます。ただし、電話やメールでは家具の量や室内の状態を伝えることが難しいため、訪問見積りをしている業者を選びましょう。
- 見積り書の内容が明確である
見積り書の内容が、「雑に書かれている」「曖昧な記載になっている」といった場合は、注意が必要です。依頼後のトラブルを避けるために、見積り書の内容が細かく記載されている業者を選びましょう。
- 必要な許可や届出を取っている
遺品整理業者は、業務内容に合わせて許可を取ったり届出を出したりしなければなりません。廃棄物処理は「一般廃棄物収集運搬業許可」、不用品買取は「古物商許可」、有料での家財運搬は「一般貨物自動車運送事業許可または貨物自動車運送事業の届出」が必要です。
遺品整理業者を選ぶ場合は、ホームページや口コミを参考にすると情報を集めやすいです。安心して遺品整理を利用できる業者を選ぶために、複数の業者から見積りを取って比較検討しましょう。
まとめ
遺品整理の契約書では、遺品整理を行う際に遺品整理の作業や金額、責任などの内容が示されています。設計書にサインをすると遺品整理の内容に同意したことになるため、事前に内容が正しいか、不当な内容がないかを確認することが大切です。
遺品整理の契約書で注意するべきポイントは、料金やサービス内容が見積り書と同じであるか、内容が明確に記載されているか、また不公平な内容がないかなどの確認です。疑問や不安があった場合は必ず業者に説明を求め、納得してから契約書にサインをしましょう。
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